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『まんがでまるわかり! さっぽろの若者支援』発行までの道のりインタビュー
まんがでまるわかり! さっぽろの若者支援(2018年10月発行)より
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更新日:
2021年08月5日
札幌市若者支援施設(Youth+)では、現場で働くユースワーカーの思いが詰まったまんが冊子『まんがでまるわかり!さっぽろの若者支援』を発行しています。
ユースワーカーを代表してYouth+センターの松田考館長が、インタビューを通じて発行までの道のりを振り返ります。
ユースワーカーの存在を知ってもらい、若い世代を応援する人を増やしたい。そんな私たちの願いをこの冊子に込めました!
Q. 先ずこの冊子をつくった理由は何でしょう?
一番は、皆さんにユースワークという分野を知ってほしいということですね。ひきこもりや不登校といった状況で「困っている人」へのサポートは世間でも認知されていると思います。また、政治やスポーツに意欲的な青少年にスポットライトを当てるような取り組みも各地で行われています。しかし、それら全ての取り組みを繋げて、全ての若者を応援するユースワーカーという職種は、残念ながら日本ではほとんど知られていません。「誰にも知られずに、良いことをやっている」なんていうのは、公共のお仕事としてはダメなんです。少しでも多くの方にユースワーカーの活動を知ってもらうために、気軽に読めるマンガという手段に挑戦してみました。
Q. マンガは松田課長が描いたのですか?
Youth+には色んなタレントが揃っていますが、残念ながらマンガを描けるユースワーカーはいません(笑)。ネット検索はもちろん、一人でコミケに出かけてみたりと、イメージに合う漫画家さんを地元で探すのは本当に苦労しましたね。漫画家さんが見つかってからは、私はセリフと場面をお伝えするだけで、毎回ほぼイメージどおりの作品を描いてもらえたので助かりました。何度か、湯臼さんのセリフに私の思いを詰め過ぎてしまい「このままだと文字だらけになってしまいますよ」と漫画家さんからアドバイスを頂いたこともあります。そのときはマンガだけに頼らず、あとに続くページで補足するようにしました。あと、実は湯臼さんはずっと有須という漢字だったのですが「これだと読者はアリスさんだと思うのでは?」ということで発行直前に改名しました。
Q. マンガは三部に分かれていますが、どんな狙いがありますか?
冊子を作った目的が一番詰まっているのは、やはりパート3ですね。私たちの代表として湯臼さんにはたくさん語ってもらいましたが、それでも足りずに番外編のQ&Aを湯臼さんに引き受けてもらいました。パート2はもともと分かりやすい分野なのであまり苦労はしませんでしたが「この表現で誰かを傷つけてしまうことはないか」ということだけは気を付けたつもりです。パート1はサラッと読むと大した内容ではありませんが、いろんなメッセージを潜ませています。太郎君が「気が付いたら湯臼さんのペースに巻き込まれていた」と感じたのはユースワーカーの腕の見せ所ですし、最後のコマの「若い人にもっともっと世の中の主役になってほしい」というセリフも気に入っています。
もちろんYouth+でも若い人たちが主役ですから、運営に関することも館長の私より利用する皆さんに決めてもらいたいと本気で思っています(笑)。
Q. 世の中の主役・・・マンガでも民主主義という言葉が出てきましたね
キーワードは「自分の意思で選ぶこと」だと思います。最近は「こどもの貧困」という社会問題が取りざたされていますが、人は生まれてくる家庭を選べません。学校や職場には、ある意味「否応なしに」通わなくてはなりません。そう考えると、若い世代が唯一、自分の意思で選べるのが放課後や余暇の過ごし方なんです。家庭を第一、学校や職場を第二とするなら、放課後や余暇は第三の時間にあたります。誰しもが自分の人生の主役として、自分らしく過ごせる時間でもあります。多くの人が中学校時代の思い出に部活動をあげるように、第三の時間をどう過ごすかは「わたし」を形作っていくうえでとても大きな意味合いを持っています。ヨーロッパでは、多くの若者が無料のユースセンターや地域のユースクラブといった学校とは別のところで第三の時間を過ごし、多様な経験を通じて「わたし」を形成しています。ところが日本では、習い事をするには家庭の経済力に左右されますし、部活動は学校内の人間関係に左右されます。「この家の子」でも「この学校の生徒」でもない「わたし」として過ごせるはずの時間が、家庭や学校の力関係によって決められてしまうのは不幸なことです。もちろん、だからと言って「習い事や部活動のできない人だけを(大人の基準で)選んで提供してあげる」という目線ではなく、全ての子ども若者が自ら選択できる領域として、ユースワークが存在することが大切です。この「選択できる」ということに私はすごくこだわっています。前に「ひきこもっているときは、どんどん選択肢が奪われていく気がした」と話してくれた若者がいます。そんな彼がギリギリの状態で選択してくれたのがYouth+センターでした。太郎君も、Youth+の数あるイベントの中で、自分のやりたいことだけを選んで参加しています。あくまで本人の自由な選択から始まって、いつの間にか様々な人と関わる体験をし、究極的には「わたし」と社会が繋がっていく。そこに寄り添っているのが私たちユースワーカーだと自負しています。
Q. 最後にメッセージをお願いします。
若い人たちが笑ったり悩んだりできるYouth+という場は最高ですし、そこに一緒にいられるユースワーカーは本当に幸せな仕事です。一人でも多くの方に冊子に込めた思いが届いたら嬉しいです。
ユースワーカーのたくさんの思いが詰まったまんが冊子『まんがでまるわかり!さっぽろの若者支援』ぜひこの機会にご覧ください!
札幌若者支援総合センター(Youth+センター) 館長
松田 考
札幌市若者支援総合センター 館長。
勤労青少年ホームにて、青少年の余暇活動やボランティア活動をサポート。
平成18年より厚生労働省事業、地域若者サポートステーションを受託。
チーフスタッフとして、ニート状態にある若者の支援、高校生へのキャリアカウンセリング、引きこもりの訪問などを行う。