市民参画部
市民参画課
多様性ある人と未来を支える
INTERLOCUTOR
-
部長 下川原 清貴 Shimokawara Kiyotaka
-
主任指導員 環境プラザ 三瀬 雅允 Mise Masanobu
-
指導員 市民活動サポートセンター 松谷 雄太 Matsuya Yuta
-
指導員 男女共同参画センター 川口 友紀 Kawaguchi Yuki
-
指導員 男女共同参画センター 久世 ののか Kuze Nonoka
進行 課長 斉藤 美季 Saito Miki
担当しているからこそ分かる、市民参画課のこと。
部門長と若手職員、それぞれの思いを語り合ってもらいました。
もっと踏み込んだ
関わりへ
エルプラザを財団が受託したきっかけについてお話しください。
下川原 婦人文化センターや女性センター時代の活動は、女性の生活文化創造や社会進出の促進などが主でした。男女共同参画センターをうちが受けた際、それだけじゃなく、一緒に社会を作り、変えていこうという意見が出たと思います。うちの部署が市民「参加」じゃなく「参画」部なのもそういう流れからですね。
考え方が変わったきっかけは何だったんでしょうか?
下川原 平成22年に上野千鶴子さんに講演をしていただいた際、課の抱える問題に対してアドバイスや苦言をいただきました。ただ淡々と女性に関する本や資料を読んだりする施設ではなく、もっと人と人が交流しにぎわう場であってもいいんじゃないか。昔から利用している人に遠慮して新しいことができない施設ではなく、これから来てほしい人や支援したい人たちに喜んでもらえる施設にする必要があるんじゃないか。そのように我々の意識が変わり、翌年から早速、起業支援や情報センターのリニューアルが始まりました。
上野さんに背中を押してもらったのがきっかけだったんですね。
下川原 残念なことに私はその場にいませんでしたが、きっとそこでチャレンジする気持ちが芽生えたんじゃないかな、と。
平成15年から17年までは男女共同参画センターだけを貸室とともにうちで受けていて、市民活動サポートセンターと環境プラザは市の直営でしたが、指定管理が始まった翌年度からそちらも受託することになりました。それからもう14年も経っているってことですね。14年も経っているならそこそこできてないとだめだなあ(笑)
行政が直接運営していた頃と比べて一番変化したところはどこですか?
松谷 柔軟性は出ましたね。前例踏襲型ではなく、違うことや新しいことをやってみよう、という雰囲気が生まれたのかな。
下川原 そうかもしれないね。それが大きく変わったところなのかな。
松谷 人のつながりなどは今も継承されていますね。
エルプラザの追い求める「関わり」とは
この先、自分たちが目指すものはイメージされていますか? たとえば10年後とか。
松谷 街づくりなどのNPOや市民活動などは、1つ1つは小さくても、集まればよりよい社会へ発展するための原動力となるものなので、もっとその輪が広がっていくことが理想ですね。
下川原 うちがハブになって、そのポイントごとにいる人たちがそれぞれ自分の地域で活動できるようになればいいよね。そのための「関わり」ってどんなことをやってる?
松谷 相手から相談されたら応えて、こちらも相談したり、という程よい距離感の関わりを持ちながら、いろんな地域の人をつないできました。
下川原 要求があったときだけ関わっていたんでは不十分かもしれないね。ほかにも何かあるかも。そこがこの先10年の市民活動サポートセンターにとって必要な戦略だと思う。
自分たちが関わった結果が、10年後に自分たちの施設の中だけで終わっていたのではだめ、ということですね。
下川原 その人たちが外に出ていったり自分の地域に戻って、自分たちの力で活動できるようになっていないと。
久世 センターが伴走してきた人たちが自分たちで走れるようになって、たまにセンターにも寄ってくれるようなイメージです。
下川原 次の新しい人たちが活動する中で、次の伴走者を見つけてくれているとうれしいな。押し付けの古い価値観ではなく、活動の楽しさや出会った人との絆、温かさによってつながっていくことにゴールがあるといい。
久世 コアな活動の人たちよりも、その周りにいてちょっと関心を持って行動する層を増やしていった方が、結果的に中心にいる人たちもやりやすくなると思います。
三瀬 よく分かります。環境問題も突き詰めすぎると視野が狭くなるね。目的が同じ団体でも、方法論を巡って対立してしまうこともあります。環境プラザとしては彼らに、多様な選択肢や考え方があることを知ってもらうことが大事。
下川原 自分と考え方が違うからといって相手を拒絶したり排除するんじゃなく、「自分とはちょっと違うけど許容範囲」と認める。そういう考え方を広めるために我々がどう関わるかが課題だと思うんだけど、どう?
久世 ジェンダーの当事者支援でLINE相談などをしていても、どちらかの価値観しか知らず、かつそれに当てはまらなくて苦しんでいる人たちに別の選択肢を示してあげると、「知らなかった!」と言われることがあります。
松谷 エルプラザは建物の形がL字だからエルなんですけど、情報や選択肢を得る(エル)場所という意味も込められていると僕は思っています。今日どうしてもこれが言いたくて(笑)
三瀬 いろんな考え方があるとは教えるけど、コミュニティが閉じた価値観に漬かっちゃうと対立関係も生まれるから怖いかな。コミュニティの輪郭はぼんやりしていてもいいから、いろんな形でつながって街全体での取り組みに発展するのがいいと思う。
久世 グラデーションをいかに作っていくかですね。
三瀬 輪郭をぼかすために、閉じないようにするために私たちがいるのかな。中間の部分を増やすという意味でも。
川口 管理部門として今みんなの話を聞いていて、安全安心を実現するために日々の一歩一歩を確実に積み重ねていくことが私の仕事だと思いました。
下川原 管理部門の仕事は、エルプラザ内の全体を見ているからゴールが少し違うかも。
松谷 私はつながりを大事にして相談しやすい関係性を作ってきたという自負はすごくありますが、利用者が僕個人に会いに来ているのか、センターの職員だから会いに来ているのか、というジレンマが少しあります。
下川原 「僕に会いに来た」でいいんじゃない? それだけじゃだめだけど、きっかけは何でも。いい加減な関わり方をしてたらそうはならないわけだから。
ネットワークで
人の輪を拡大
市民参画課の良さをどういうところに感じていますか?
川口 市民参画課って、環境のプロフェッショナルもいて、市民活動やジェンダーのプロフェッショナルもいますよね。そういう多様性が、ここならではの良さだと思うんですが。
下川原 確かに。それぞれの分野に分かれてはいるけど、うまく機能すれば互いに連携していけるよね。ここで仕事をしてみると、掛け合わせることで生まれるものがすごく多いことに気付くよ。
課題のようなものは見えてきたのでしょうか?
下川原 これから出てくるであろう人にもどうやって関心を向けていくかがすごく大事。環境教育も、家の中や日常生活でさりげなくできる小さな活動の1つ1つを通して、環境について考えてくれる人が少しでも増えてくれたらうれしいな。男女分野だって、男性たちのジェンダーに対する認識や理解がもっと進んで、女性の生きづらさが解消されてほしいと思う。
この先10年でそこをどうやって変えていくか。潜在的活動者のようなものをいかに増やすかが、一番大きなテーマなんじゃないかとは思います。
そのためには何が必要だとお考えですか?
下川原 今は新しいことにチャレンジしていく気持ちを忘れないことと、想像力が大事じゃないかな。人の気持ちや事柄、世の中の変化などに対する想像力。いろいろなものに想像力を働かせてものを見ていく目は必要だと思う。
活動で得た
かけがえのない価値
市民参画課の強みとはどういう部分だと思われますか?
下川原 みんながいいと思うことを、お互いに背中を押し合って前に進められる職場にしたいね。仕事をもっとやりやすくするために会社のルールを変えよう、というエネルギーはみんな持っているはずなのに、なかなかそこにいかない。目の前にやることが山積みで、どうしても市民の方に力を注いでしまうからなんだけど、市民を幸せにするためにはまず自分たちが幸せに仕事ができないと。そのためにはルールを変えて環境を整えることが必要。
新しいことに取り組むだけがチャレンジじゃない。自分たちが幸せになることもチャレンジだし、その幸せ感は外に向けてもアピールできるんだから、やる意義があると思うんだよね。
チャレンジすることで、行政にはできないこともできたりするんでしょうか?
三瀬 昆虫食の講座の際は横のつながりの大切さを感じました。オンライン事業の準備であれがない、これがないと大変だったんですが、もしもの時に備えて管理部門が物品を買ってくれていたおかげで事業が無事に行えたんです。環境局からもおもしろいですねって言ってもらえて、テレビや新聞の取材も来てくれて、私たちだからこその事業ができたかなと思います。課題は残りましたが、それを上回る達成感がありました。
下川原 チャレンジしないと課題も見つからないからね。やって良かったということだよ。
下川原 食の問題は地球環境を考える上では必要なことだから、昆虫食を単なるゲテモノ食いじゃなく環境教育とうまく結びつけて伝えていけるといいね、という話は事前の打ち合わせでも出ていました。
三瀬 テレビもそれにちゃんと共鳴してくれて、取り組みを取り上げてくれました。チラシを見て来たっていう若い参加者もいたし、市民活動と環境プラザのつながりもできました。
ほかにも印象深い出来事があったりしますか?
川口 活動協会に入って1年目の頃は劇場で勤務をしていました。市民参画課に異動し、親子向けサロンを担当した時に何をすればいいんだろうと自分なりに考え、劇場でお世話になっていた劇団員さんや、劇場で育成した劇団を呼んだりしました。その時ちょうど市民活動サポートセンターでのマルシェも行われていて、当時の指導員さんに頼み込んでマルシェの人にも呼び込みをしてもらったおかげで、お客さんが集まってくれました。
久世 去年の女性応援フェスタの分科会はSDGsがテーマでしたが、その時ゲストとして参加していただいた環境団体の方が、「SDGsには環境だけでなくジェンダーもあるけど、今回ゲストで呼ばれて慌てて勉強しました」と言っていました。海外と違い、日本ではまだまだ「環境とジェンダー?」というリアクションが多いですね。終わった後みんなと話して、ハードルが高めなことも考えていけるのかな、と感じました。
下川原 考えるきっかけって一緒にいないとできないんだよね。
久世 あの人に聞けばいいんだ、となるのはすごく大きいですね。
三瀬 協会のポテンシャルはすさまじいと思っています。たとえば環境教育では、200館も児童会館があって市内の小学生にアプローチできる。それこそ市に匹敵する信頼度を目指していいんじゃないかと。課を越えて連携というより、同じ協会なんだから一緒に仕事して当たり前じゃん、というのが個人的な思いです。
下川原 すでに目指しているからこそ連携と言ってるんだと思う。事業計画の策定の中にも他部門や他団体の連携が出てくるし。
三瀬 それぞれが持っているパワーを互いに発信して認め合い、協力することで生かしていく。そのためには、こっちも自分の力に自信を持たなきゃいけませんね。
下川原 ただ、その自信には裏付けが必要だと思う。根拠を明示しないとね。施設って、前に進んでもらう人と脇を固める人の両輪がそろって機能するでしょ?そういう意味では、脇を固めてくれる人が裏付けを作ってくれることで、安心して前に進めるのかもしれない。
川口 こうやってみんなの話を聞いているうちに、たとえば市民活動サポートセンターの事業があるたびに管理の人間が1人おじゃまして、手伝いながら施設のアピールをする時間を少しもらうことはできるなと思いました。そしたら利用率が上がるような営業戦略にもつながるんじゃないかと。今度係内のミーティングの時に提案しようと思います。
下川原 言語化するっていいことかもしれないね。そうすることで自分の考えとか、何を求めているのかが見えたりするから。それぞれの部門でやってみてもいいよね。