こども若者事業部
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こども育成課
児童会館の未来は地域とともに
INTERLOCUTOR
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部長 会田 彰仁 Aida Akihito
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主任指導員 伏古児童会館 浦崎 雄樹 Urasaki Yuki
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指導員 拓北小ミニ児童会館 菅沼 悠 Suganuma Haruka
進行 係長 山田 直樹 Yamada Naoki
担当しているからこそ分かる、こども育成課のこと。
部門長と若手職員、それぞれの思いを語り合ってもらいました。
児童会館だからできる子どもとの関わり
財団が児童会館を受託したきっかけをお話しください。
会田 財団の設立は1980年。児童会館ができてからかなり後になります。当時は、世の中が豊かになってきた反面、核家族化など子どもたちが孤立するような状況や、非行などが社会問題になるなど、子どもや青少年を取り巻く課題も変化していました。
そんな中、地域での人と人との関わりを通じて将来の社会を作っていく人を育成する目的で活動協会が設立されました。当時はリーダー養成や、子育てをするお母さんたちの集いといった事業を、グループワークの手法を用いて行っていました。
設立から6年後の1986年、児童会館の数も増えてきて、活動協会の取り組みが児童会館の仕事にマッチングするんじゃないかと札幌市から話をいただき、協会としても、たくさんの拠点を持つことで、地域を舞台とした人づくりや居場所づくりにもっと広く関われるのではないかと考え、運営を受託しました。最終的にはすべての児童会館を運営することになったというわけです。
児童会館を運営する中で、こども育成課が大事にしていることは何でしょう?
会田 子どもたちとどう関わるかということをずっと大事にしてきました。1つ目は「遊びの手法を生かすこと」。遊びなら、やらされるのではなく子どもたちが自ら湧き出る感情に従って主体的に努力もできるし、他者との関わり合いを通して協調性も学べます。
浦崎 遊びだと点数や結果に関係なく褒めたり一緒に盛り上がったりして自己肯定感を高めることができます。それが学校にはない児童会館の強みですね。子どもたちは一人ひとり伝えることや伸ばす部分が違うので、遊びの中で楽しみながら課題を克服することは大事です。
会田 2つ目に「遊びを通じた異年齢交流」も児童会館の特徴です。子どもたちの世界は意外と狭いので、放課後さまざまな年代や考えの人と触れ合うことはとても大切です。いずれ社会に出る時のためにも、いい経験になると思います。
浦崎 異年齢の人と先輩後輩ではなく、友だちという形でつながれるのも児童会館の良さです。私も学生時代に児童会館を利用して、その時知り合った他学年の友だちと今も交流があります。趣味や考えの似た子ども同士が引き合った時、年齢は関係ないんだということに気付けたのはいい体験でした。
会田 そう、体験だよね。3つ目は「子どもたちが体験から学べること」。むしろ体験でしか得られないものがたくさんあるから、行事や日常の遊びを通していろんな体験を提供しています。そうして彼らは知らなかった世界に触れ、自分の興味や可能性を見出していく。その選択肢をこちらが作っていくんです。
菅沼 体験といっても行事とか遊びだけではなく、たとえば友だち同士で議論したことや怒られたこと、泣くほど笑ったことなんかも含まれるので、意外と深いんですよね。
会田 「地域に目を向ける」というのも重要なキーワードかな。子どもたちにとって地域は、たくさんの人との関わりを通じて自分が育つ場所。職員や親だけじゃなく、地域に育てられているんですよね。
地域が子どもを育てる、という視点は大切ですね。
会田 もしかすると主役は地域の方かも。自分たちはそのお手伝いをする脇役で、児童会館を拠点にいろいろな人をつないでみんなで子育てをする。そういう意味でも、子どもたちや地域の人をどう引き込むかが重要です。
子どもたちの安全・安心を見守るという面はどうですか?
会田 家での虐待や学校でのいじめなど、子どもが子どもらしくいられる場所が少なくなっています。だからこそ児童会館は、自分らしく、笑顔でいられる安全な居場所であるべきだし、我々がそれを全力で守っていく必要があります。
後は貧困の問題ですね。昔のような、食べ物がないとか服がぼろぼろだとか、そういった目に見えて分かるものばかりじゃない。見えにくい貧困の背景に気付いていくことも児童会館の役割です。根本的な解決は我々だけではできないけど、アンテナを張って必要な支援の場所につなげていくことが重要です。
浦崎 児童会館では、必ずしも子どもが地域の方とものすごく親しくなるわけではありません。でもお互いの顔を知っていれば、何かあった時お互いに助けを求めやすかったりします。地域の安全を守るためにも、児童会館がつながりを作るという役目を果たしているのかなと思います。
菅沼 いじめに遭っている子が、「ミニ児童会館だったら行くことができる」と言って毎日泣きながら来ていたことがありました。話をするのが館長だと子どもにとってもハードルが高いので、指導員の私が対応しました。してあげられることは本当に少ないんですけど、「どうしたの?こうすればいいんじゃない?泣いたっていいじゃない」と話しかけて、一人になれて落ち着ける、自分らしくいられる環境を作りました。
4年生の夏にいじめに遭って、5年生の夏くらいには友だちと一緒に来館できるようになったのを見て、こういうことが安全・安心な場所ということなのかと思いました。児童会館にいる間だけでも、困っている子どもたちを、親でも先生でもない指導員としての立ち位置で守ってあげられたらいいかな、と思います。
浦崎 よく会館の職員と話すのは、子どもたちに対して何か一つきっかけを作って、今まで見ていたものとは違う世界を見せてあげたいということですね。
菅沼 ええ。児童会館に来る全ての人が主役で、自分の仕事は彼らが最大限輝けるようサポートすること。子どもたちには児童会館での経験を、友達、お兄さんお姉さんたちとみんなで成し遂げた達成感とともにいい思い出にしてほしい。私自身「名脇役になる」というテーマで12年取り組んできました。
思いを
共有するための
「言葉」を作る
育成課で「ビジョンプロジェクト」を立ち上げたそうですが、目的や背景をお話しください。
会田 今まで話したようなミッションやビジョンについて、みんな何となく理解はしているんだけど、共通理解のための分かりやすい言葉がなかった。経験のない若い職員も含めて、みんなで共有できる伝播しやすいキャッチフレーズを作りたいと思ったんです。いろんな人にいろんな角度から見てもらい、新しい言葉で作りあげたというのが経緯です。
まず「街と共に未来を育む人づくり」というミッションワードについてお聞きしたいのですが。
浦崎 子どもたちを育てたり未来を作っていくのは、児童会館だけではできないことなので、地域の方々や施設などと連携して行うという意味で「街と共に」になりました。
その後の「人づくり」ですが、今私たちが関わっている子どもたちが、大人になって自分たちの思いを引き継いでくれたり、ミッション達成のために、子どもたちや地域の人たちがつながっていくという意味を込めています。
ビジョンワードは2つあるんですね。1つ目は児童健全育成の専門家集団として日々スキルの向上に努め全ての子どもを笑顔にする、2つ目は地域と子どものつなぎ手として一人ひとりと心を通わせ合うことで豊かな未来を育む、ということですが。
菅沼 1つ目のビジョンですが、私たちはただ子どもたちと過ごしたり見守ったりしているわけではありません。健全な育成には多くのスキルを必要とします。自分たちが専門家集団の一員であるということに一人ひとりが責任を持ち、子どもたちにできることを日々たくさん学んで身につけることが大切です。そうすれば子どもたちに還元できることも増え、職員としての誇りも芽生えると考え設定しました。
2つ目のビジョンについては、「子どもたち一人ひとりと」という部分が重要と考えています。大勢の中の一人ではなくそれぞれの子どもとしっかり向き合い、真剣に関わっていくことで、彼らの感情や感受性を育てていけたら、と。もちろん子どもたちが変わっていく様子を見たり、「ありがとう」と言われることは私たちのモチベーションアップにもつながります。
会田 活動にはまず職員全員がミッションやビジョンを理解することが大切なので、プロジェクトでまとめたこれらのワードを、今後共通の言葉として浸透させていく予定です。
「誇り」と「研鑽」の
積み重ねが
成長につながる
今後に向けて、皆さんが目指していくべき姿勢について教えてください。
会田 子どもたちの抱える課題を前に原因や有効な手立てなどを考える時、世の中の動向を知ることが解決に結びつくかもしれないよね。そうした大きな動きに敏感になり、先を見越してどう対処するか考える力を養う必要があると思うけど、どうかな?
浦崎 社会情勢や児童会館を利用する方々を取り巻く環境も目まぐるしく変わっています。児童会館だけで解決できない場合は、解決できる施設や人につなぐための情報を日々キャッチして把握しなければいけません。
会田 カウンセリングやコーチングといった、子どもたちと関わるためのスキルを身につけていくと、子どもが変わっていくための効果的なアプローチができるよね。菅沼さんは何か意識していることある?
菅沼 私はアンガーマネジメントですね。怒っちゃう子にはきっと何か理由があるはずなんですよね。それを知りたくて今学んでいる最中です。
浦崎 館長として思うんですけど、子どもたちはもちろん、保護者の方も気軽に相談する場所がほしいんですよね。ただ話を聞いてもらって気持ちが楽になりたい時がある。だから自分がカウンセリングや傾聴のスキルを身につけ、指導員やパートスタッフなど、全職員にも伝えていこうと思っています。
会田 そうしたネットワークを広げて一緒に考えていくことが求められているのかも。これだけの組織なんだからみんなで協力していろんな手法を試せるし、スキルを持った職員たちと情報共有しながら全体の課題を解決していけたらいいな。
子どもたちの変化が
見えるとうれしい
菅沼 子どもの変化にいち早く気付けるようにしようと思います。いろいろなことを経験してほしいので、彼らの興味を引くアイデアをどんどん出していきたいです。私にとっては地域の方が気軽に立ち寄れて、自然に交流できるのが児童会館の理想形。そういう場所を作れるような活動を館に提案し、名脇役として頑張るつもりです。
浦崎 あと、あいさつをきちんとする、悪いことしたら謝るなど子どもにやってほしいことは、言うだけじゃなく大人もできなくてはいけないと思います。まずやって見せて、そこから学んでもらうよう働きかける。加えて今子どもたちや社会の中で流行っているものを取り入れて自分の意識や中身をアップデートし、その上で古いものの良さも伝えていきたいですね。
皆さんからすごく使命感を感じますね。
浦崎 今関わっている方々や子どもたちの未来を作る一翼を担っていることに、誇りを持っています。そういった部分をほかの職員や児童会館の職員たちにも伝えていくのが今後の自分の課題だと思いますし、この座談会でそれを再認識できました。
菅沼 誇り……そうですね。指導員の仕事は必ずしも目に見える成果があるわけではありません。利用した方々に「ありがとう」「今日は楽しかった」と言って帰ってもらうことが私の中では誇りです。だからいつも全力で向き合い、いただいた言葉に対してちゃんと恩返しができるよう努めていきたいです。
志の高い若手職員の話を聞いて、部長はいかがですか?
会田 子どもたちの変化はなかなか見えにくくて、分かるまで年月がかかるかもしれません。一人ひとりとしっかり関わった結果、それが見えた時は嬉しいので、みんなもそれを信じて、諦めずに最善の策を常に考えてほしい。
そして自分たちや職員が大事にしていることをどんどん伝えていって、同じ考えを持った人たちが増えるといいなと思います。それが、きっと子どもたちの笑顔の輪が広がることにつながるはずです。