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こども若者事業部

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若者支援事業課

若者たちのサードプレイスとして

INTERLOCUTOR

  • 課長 Matsuda Kou
  • 指導員 若者支援総合センター Nakaya Eri
  • 指導員 豊平若者活動センター Hashimoto Haruki
  • 指導員 アカシア若者活動センター Futamata Syouya

進行 係長 Yamana Toru

担当しているからこそ分かる、若者支援事業課のこと。
部門長と若手職員、それぞれの思いを語り合ってもらいました。

本当に必要なところへ支援を届ける

若者支援センターの前身は勤労青少年ホームと聞きましたが。

松田 勤労青少年ホームは40年続いてきた行政の施策で、私も10年携わりました。最後の方は「もういらない」「時代遅れ」と言われましたが、まだ新しい可能性を秘めていたので、必要だと言ってもらえるにはどうすればいいか必死で試行錯誤しました。

若者支援は年齢幅が広いですが、その中でどんなアプローチをするのでしょうか?

二俣 若者支援の対象年齢は34歳までですが、高校生・大学生世代がメインターゲットで、事業によっては中学生も対象に据えているように思えます。こうした若年化は社会的背景の影響などもあるのかな、と。

松田 二俣君はなぜ若年化が起こっていると思う?(笑)

二俣 やっぱり子どもの貧困など社会的にスポットが向いていること、言うなれば関わりやすさにあるのかな、と。児童会館や学校と連携ができているので可視化されていることもあるんじゃないでしょうか。

松田 その頃はまだ貧困問題はフォーカスされてなかったかな。勤労青少年ホームは文字どおり働いている青少年が対象で、設置時は15歳~19歳までだったのが、進学率上昇に伴って就職年齢がどんどん上がった結果、最後の方は20代後半の人たちの、単なる娯楽施設と批判されるようになった。

札幌市が若者支援基本構想を作って若者支援施設に生まれ変わったのを機に、私たちもヨーロッパの若者支援を勉強したところ、10代後半を対象としたユースワークという概念に行きついたわけ。余談だけど、最近になって活動協会の前身が「札幌ユースワーク協会」だと知って、かなり驚いたよ。

二俣 諸先輩方は先を見通していたんですね。

松田 そう、原点回帰だね。10代の勤労青少年にとっての夜の時間はまさしく「余暇」だけど、20代後半の人にとっては、その時間は「娯楽」でしかないわけ。一部の若者の趣味を充実させるために税金を使う必要があるのか、という批判に対して、現場でも明確に反論できなかった。

社会の一員である
という「気付き」

若者支援事業課のミッションについてお聞きしたいのですが。

二俣 児童会館から異動した当時は自立支援の印象が強かったんですが、実際に若者たちと関わるうちに、彼らが社会的に自立していく過程において、自分を見つめ直す余暇の時間が重要だと感じました。自立支援だけじゃなくそういう時間に対するサポートをしているんだよってところを、松田課長はどうやったら伝えていけると思いますか?

松田 全国のユースワーカーも、そこをどう言語化するのか悩んでいるのが現状。ヨーロッパと違って、日本の若者は中学→高校→大学→就職と隙間なく移行していくから、レールに乗っているうちは余暇の時間が少ないよね。それはつまりユースワークの入り込む余地が少ないということなので、どうしても不登校やひきこもりなど「レールから外れた人」に対象が偏りがちになる。でも私たちの目指すユースワークは、困難を抱えた若者への支援だけじゃないので、余暇という言葉のイメージから変えていかないと。

二俣君、余暇を別の言葉に言い換えてくれないかな(笑)

二俣 余暇ですか。難しいですね。うーん、「自分らしくあれる時間」ですかね。

松田 次の指定管理の提案書にそう書くよ。相当イマイチだけど(笑)。それでいこう!

「社会の一員であるという気付きを育む」というところを、どのように目指していくのでしょう?

中谷 今、実際に事業をやっていて、社会参加促進事業の担当をさせていただいているんですけど、若者と話したり、若者の参加数を見ても、社会の一員であるという自覚があまりない人がすごく多いなと感じています。松田さんが20年間この仕事に関わってきた中で、その要因はどこにあると考えてますか?

松田 若者に社会の一員であることを気付いてもらおうとしたら、まずは小さいグループの活動を通じて、メンバーの一人なんだっていうのを感じてもらうのがいい。そうして小っちゃい体験の輪を続けて、輪を大きくしていく。そこにつながるフィードバックが十分あれば、メンバーシップ意識は持てるし、シティズンシップへと転化もできる。

どこまで我々が担うべきなのかはいつも悩みますが、少なくとも原体験は提供できていると思います。「社会の一員であるという気づきを育む」というのは究極のゴールだよね。

中谷 思い返せば私も大学時代、家にも学校にも居場所がなく、そのどちらでもないサードプレイスで出会った大人がきっかけで「自分の人生は自分で選んで作っていっていいんだ」と気付きました。その原体験が今の力になっているのかも。今は若い人たちにもそういう経験をしてほしいという気持ちでユースワークをしています。

松田 私が20年かけて出会えた境地に最初に出会えたのは幸福なことだと思う。次のステージを作っていってくれることを期待しています。

憧れられる
「人づくり」へ

若者支援事業課にとっての「人材育成」についてお聞かせください。

松田 自分自身のことを振り返ってみても、今のうちの課を見ても、活動協会に染まっていない若い職員の「無邪気な違和感」にこそ真実があると思う。個人としても課としてもそこが成長のチャンスなので、遠慮なくモノを言える空気さえ作っておけば、あとは皆が勝手に育ってくれる。

個人的には「子どもたちの憧れる職業アンケート」にユースワーカーが選ばれるのが夢なので、そのためにはワークライフバランス、特に女性が安心して働き続けられる環境を作りたい。当課には私よりも女性リーダーの方がずっとふさわしいと本気で思ってます。

橋本 Youth+は5館あって、それぞれに特色がありますが、その中で働くスタッフやユースワーカーはそれぞれどういう役割でいるべきなんでしょう。館それぞれの特色を生かしていくにはどんな方法があるのかなと。課長としては今後どの部分を求めているのか個人的にも気になりました。

松田 建物の機能、立地する地域、そこにいる人、という3つの要素があるとしたら、圧倒的に人が鍵を握ると思うよ。本州出身の私から見れば、札幌は地域ごとの特色の少ない街だし。そのときどきの職員と利用者と地域の人とが、しっかりと混じり合って生まれた色が、その館の特色になっていくのがいいんじゃないかな。

橋本 もうひとつ。現在アウトリーチ事業としてさまざまな活動をしていますが、キッチンカーを活用した事業を担当していて、まず地域での拠点ごとの理解や協力がないと、1人や1つの団体だけではどうしてもカバーしきれないと感じています。アウトリーチ事業のゴールをどこに置いていて、どうありたいかといった理想像が、松田課長の中でどんな風にできているのかお聞きしたいです。

松田 アウトリーチをする理由は、単純に私たちユースワーカーの持っているポテンシャルが、施設のキャパシティを上回っているから。施設を飛び出して、あちこちで活動している市民の皆さんと協働して、花を咲かせたあとに戻ってくる拠点がYouth+。

我々の雇用確保の面からも、若者の活動場所という意味でも、Youth+が存在する意味はとても大きいけど、ユースワークの舞台はあくまで札幌市全域でありたい。アウトリーチはあくまでそのための手段なので、アウトリーチそのものにゴールは無いかな。

「地域とともに」で、
良い循環を

中谷 「子ども・若者の居場所 いとこんち」はどういう経緯でできたんですか?

松田 国や自治体の施策動向、地域のニーズ、他課や他団体との連携、私たちの取り組みの進化、あらゆるベクトルが向かう先に、いとこんちという発想が自然と浮かび上がってきたというのが正直な感覚。あと、活動協会は、遊びや野外活動、あるいは働くことも含めて「体験を通じて得られる学びや育ち」を提供するプロ集団なわけだけど、今の社会でどんな体験活動が求められているかを考えたときに、安心安全な家庭生活の体験を必要としている子ども・若者がとても多いんじゃないかと。実際にいとこんちを始めてみて、活動協会の職員が結集して「本気のおままごと」をやれば、育てられない子ども・若者なんていないんじゃないか、って今は思ってるよ。

その先には、活動協会だけじゃなくて、さまざまな関係団体や一般の市民の方々が地域で運営する「いとこんち」を100カ所くらい作りたい。「地域の子どもを地域のみんなで育てる」というフレーズはよく聞くけれど、そのためには子どもと地域を繋ぐコーディネーターの存在が不可欠なわけで、じゃあ誰がその役割を担うのかと考えたときに「札幌には活動協会があるじゃないか」と言われるようになりたい。そのためのノウハウがいとこんちには詰まってるよ。

中谷 すごく日本的かもしれないですけど、私は家族ってそれぞれ個として独立していなければならないような気がしています。その中で、社会から求められている家族というものにどうしても合致することができなかった、典型から外れてしまった人たちにとって、いとこんちの存在は安心できる。そんな場所が市内に100個できたら素敵だなと思いました。

松田 まさにそうだね。「日本的な理想の家族モデル」と現実とのギャップがどれだけ多くの子どもや親、特に女性を苦しめているか。そのギャップを家族構成員の努力で埋めるのではなく、社会全体で補うのが、いとこんちの発想。

課長から見て、若い職員に対して望むことは何ですか?

松田 人材育成でも話したように、新鮮な視点で違和感に気付いてもらうことが一番。違和感は抱えたままだと不満になるけど、きちんと表明すれば意見になるので、例えば事業計画を立てる話し合いなどに、課の一員として意思決定に参加してほしい。まさにユースワーカーが若者に呼びかけているのと同じことを若い職員に期待します。

中谷 社会の一員として、「参加」ではなく「参画」までを経験してもらうということですかね。

松田 ただ、我々がちゃんと参画までを意識しないとたどり着かないから、ミッションにはやっぱりそこまで含めています。可能性を諦めず、理想を捨てず、目標は大きく取った方がいいだろうね。参画までたどり着いた事例もなくはないけど、行政はどうしたって困っている人たちが救われたエピソードの方を喜ぶから、我々がきちんと発信しなければなりません。

この先10年の展望など、見えているものがあればお話しください。

松田 いつの時代も、トレンドを作るのは若者。幸いにも私たちは若者の近くにいる存在なので、彼ら彼女らをしっかり支え続けているうちに、10年先の未来は自ずと見えてくるんじゃないかな。そういう意味では、言葉としては変だけど私たちの役割は「若い世代が社会を作ることのできる社会を作る」ということに尽きるよね。

ただし、Youth+で出会う若者の声を聴いているだけでは不十分だということは、当課の職員なら全員分かっていると思う。研究者が出すマクロデータや国の動向などを俯瞰して学ぶことも大切だし、まだ出会えていない若者の声を聴くためのアウトリーチもまだまだ発展途上です。

あとは、やはり10年先の展望を考えるうえで、さまざまな政策や計画を作る立場の行政との連携は欠かせない。私たちの場合、現場でニーズをいち早く掴み、行政に伝えることができるのは最大の強みであり、責任だと思う。札幌の若者や、若者と関わる市民の皆さんの声をしっかりと社会や行政に伝えていこう。

困難な状況にある子ども・若者のSOSを取りこぼさない聴診器の役割から、若い世代の意見を社会に発信する拡声器の役割まで。この先10年も20年も、その役割を市民から託される活動協会でありたいよな。

二俣 今回こういう機会を設けてもらって、これから若者にどういうことができるだろうかと考えると、改めて早く若者と話したり一緒に動いたりしたいな、と強く思いました。

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